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エンジニアがお金について本気出して考えてみた

株式投資や節約などについて書きます

会社における「説明」の構造

働き方
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単に生活するにせよ、何らかの投資を行うにせよ、僕らは労働してお金を得る必要があります。

大抵の人は労働してお金を得るための手段として「会社」というものに所属します(かくいう僕もそうです)。

会社はお金を儲けることを目的とした組織ですが、会社に所属する全てのメンバーが、その労働時間の全てをお金を儲けるための活動に費やしているわけではありません。

実際のところ、程度の差こそあれ、僕らは会社にいる時間の多くを「説明」に費やしています。

上向きの「説明」

例えば、受け持っているプロジェクトが元々のスケジュールより遅れている。その場合、現場の僕達は上司に「何故遅れているか」を説明しなければいけません。思わぬトラブルがあったのか、工数の見積もりが誤っていたのか、それとも他に優先度の高いタスクが割り込んだのか…理由は様々でしょうが、この「上司への説明」が多くの人にとって最も身近かと思います。

中には、細かい内容にまで逐一説明を求めてくるうっとおしい上司もいるでしょう。アイツはイヤな上司だ…と嫌うのは個人の勝手ですが、その上司もあなたや他の同僚からあった説明を咀嚼した上で自分の上司に説明をしなくてはいけない...という意味ではあなたと立場は同じです。その上司の上司はさらにその上の上司に説明をする…というステップが増えれば増えるほど、その会社は中間管理職の多い、すなわちフラットではない組織ということになります。

この説明の連鎖を辿って行くと、社長を含む経営陣に行き着きます。経営陣は、下から上がってきた説明およびデータ等から経営判断を下します。ごく小さな会社では、あなたの一つ上の上司が経営陣のメンバーそのものであったり、経営陣の参加するミーティングに参加を求められたりすることもあるでしょう。

経営陣は一番上にいて最後に説明を受ける立場なので、一見すると最も偉そうに見えます。会社の方針やその後の行動というのは経営陣の判断によって決まるわけで、「経営陣はいつも売上を倍にしろだの何だのと無茶ぶりばかりしやがって…」なんていう不満を抱かれやすいのがここです。

ところが、偉そうにしている経営陣も結局のところは「誰かに必死で説明をしなくてはいけない」という点では僕らと全く変わらない、哀れな存在です。彼らが誰に説明を行わなくてはいけないかというと、株主です。

「株主総会」はまさに経営陣が株主に対して「どうして会社は今のような業績になったのか」を説明する場です。株式会社ではその会社の持ち主は株主の皆様、ということになっているので、形式的には株主が最も偉いのです。なので、株主総会では業績の悪い会社は株主から激しいツッコミを受けることになります。

より小さい会社、特にベンチャーやスタートアップと呼ばれる会社ではVC(ベンチャー・キャピタル)と呼ばれる専門の投資家がお金を握っているため、ツッコミどころか経営に口を出してくることもあります。スタートアップは基本的には赤字なので、黒字になる前に投資家にそっぽを向かれて資金がショートしたら終わりです。そのため、既に利益を上げている会社よりも投資家の意向に左右されやすい環境と言えるでしょう。

このように、経営陣というのは株主の意向次第で右往左往せざるを得ない哀れな人々です。彼らが現場に対して無茶ぶりをしてきたとしても、それは彼ら自身が株主にいいところを見せなければいけないからであって、悪気があるわけではありません。だから彼らが勘違いして会社の中で偉そうにしていてもあまりいじめないであげて下さい。

下向きの「説明」

上向きの説明があれば、下向きの説明もあります。つまり、経営陣が「今期はこういう目標にしよう!」等々の決定を行った場合に、その下の部下にその決定が伝えられ、さらにその下の部下に決定が伝えられ…という形であなたの所まで会社の今後の方針が降りてきます。

不思議な話ですが、上司に対する説明は会社ではほぼ義務に近いものなのに、部下に対する説明は端折られることがままあります。「決定した内容自体は分かるが、その理由が不明である・今一つ納得がいかない」「上で決定されたことがちゃんと自分に伝えられていなかった」こうしたことは会社で働いていると比較的よく起こりますが、これはあなたの上司やその上の上司が無能だから起こるのではありません。有能だから起こるのです。

会社の文化にも依りますが、会社においてその人が有能であるかどうかは、実務が出来るかどうかだけでは決まりません。先ほども説明したように、会社では「上向きに説明する」という行為が頻繁に発生します。そのため、上に向けてそれらしく納得の行くように、うまいこと説明出来る人間が有能と見なされることがあります。というより、うまいこと説明するのも有能さのうちである、といった方が正しいでしょう。

そのため、下に向けて説明を行う能力(情報共有力といったりもしますが)が高い人間ではなく、上に向けて説明を行う能力が高い人間が会社では出世します。「いいように使われている」「トップダウンの意思決定が行われている」という不満をあなたが会社に対して持っているとすれば、多くの場合はこれが原因です。

下に対する説明能力は、部下からの信頼度に直結します(部下に対しては厳密な説明を求めるが、自分からは情報共有を行わない、という上司が信頼されないのは当たり前でしょう)。逆に言うなら、そういった能力もちゃんと評価される会社がストレスなく働きやすい良い会社だ、ということもできるでしょう。

横向きの「説明」

会社では、上司・部下という関係のない相手に説明を行うことも沢山あります。例えばあなたがソフトウェア開発に携わっているなら、ユーザのお問い合わせを受ける部署に対して新機能の説明をする、等がそれにあたります。より広くとるなら、「今月このくらい働きました」という勤怠の報告を行うのも、横向きの説明の一種といえます。

そんなことを言い出したらほとんど全部のコミュニケーションが説明になってしまうじゃないか、と思ったかもしれませんが、実際、会社の中で行われるコミュニケーションのほとんどは説明なのです。

そのため、会社の中のコミュニケーションコストを減らし本来の業務に集中するために行うべきは、不要な説明の排除と必要な説明の効率化なのです。

まとめ

説明のコスト = コミュニケーションコストは複数の人間が集まって働く際には必ず発生する税金のようなものです。

円滑なコミュニケーションや十分な情報共有があるに越したことはありませんが、個人的な感覚としては、会社の中で無闇に説明の数を増やしすぎるとロクなことにならないと思っています。

説明にコストをかけすぎると、どんどん本来の業務に費やすべき時間が奪われます。

また、説明の上手な人間が会社で有能と見なされるのは仕方のないことですが、そればかりやっていると現場に不満の多い会社になります。

巧言令色鮮し仁、といったところでしょうか。

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